[講座01] 「働き方改革」の解説

 はじめに なぜあの銃殺事件は起きたのか

 2022年7月8日、安部元首相が銃で撃たれるという事件が起きました。

 加害者は41歳の男性で、年齢を考えると氷河期世代の人です。氷河期世代バブル経済が終わった後なので、就職するということがとても難しかった時代です。

 加害者の男性は無職ということだったので、おそらく家族も恋人もいなかったんだと思います。

 ということは、彼にはそういったテロ的なことをしても、彼自身には失うものがないということです。だから社会に対してテロ的なことができたということになります。

 けっこう自分たちって、そういう氷河期世代で正社員として仕事に就きたくてもつけずに、ずっと派遣や非正規雇用で雇われ続けた人たちを無視してきた傾向にあると思います。

 その理由は、自分たちが住んでいる日本という国が、それを許しても構わない社会だからです。

 そういった社会的な背景を考えると、こういったテロ的なことが起きた責任というのは、実は加害者一人だけでないということがわかります。

 理不尽な扱いを受けてきた人たちを、見て見ぬふりをしてきた私たちにも責任はある。だから少しずつでも社会を変えていかないといけない。世の中のことをよくわかっていないといけない。そのためにどうするのかを一人ひとりが真剣に考えないといけない。

 なので今回はそのアプローチの一つとして、新しく変わった日本の労働基準法について解説していきたいと思います。その中でも知っているようで知らない「働き方改革」について解説していきたいと思います。

 なぜ日本で「働き方改革」が必要になったのか。その背景もふまえて解説していきます。

 お話の流れとしてはこのような感じです。

 まずは、働き方改革の概要から説明していきます。

 

ー 目次 ー

 

 

01 「働き方改革」の概要

 いまさらきけない「働き方改革」について。

 そもそも働き方改革の主旨の1つとしては、「魅力ある職場づくり」によって、人手不足を解消しましょうというものです。

 日本の雇用の7割、人数で言うと約4200万人の労働者が中小企業で働いています。

 「労働経済白書」のデータによれば、全体のうちの約50%、つまり約2社に1社が人手不足と感じています。

 今後、出生率を約2人に上げたとしても、将来日本の人口は2060年くらいには、約2000万人くらい減っていくことが分かっています。

 働く人の人数でいくと、経済成長がなかった場合、2040年には現在より約1、000万人も減ることが予測されています。人口がこれから減っていくのはほぼ間違いないです。

 特に中小企業では、人手不足感が強い傾向にあります。

 人手不足を解消しないといけないのは、長時間労働、職場での働きやすさ、働きがいといったものにマイナスな影響を与える可能性があるからです。

 ですので、少ない人数でも生産性を高めていくことに加えて、「働き方改革」による「魅力ある職場づくり」が重要になっていきます。それで人手不足を解消していきましょうということです。

 イギリスの調査においても,人手不足を生む最大の要因は,「労働者の離職」ということがわかっています。

 ですので,私たちは、離職などによる人手不足を解消するための取り組みを積極的にしている会社を選ぶ必要があります。

 たとえば「年休を取りやすい環境にある会社」だとか「残業時間を減らそうと取り組んでいる会社」は、「離職率の低い会社」である可能性が高いといえます。

 年休を積極的に取らせているなど「魅力ある職場づくり」をしている会社であれば,会社を辞める人が減っていくので,「人材の確保」を維持している会社ということになります。

 人材が確保している会社であれば,また1から育てていきましょうということをしなくてもいいので,会社全体の「業務の向上」を促している会社といえます。

 そして会社全体の業務が向上すれば,会社の「利益を増やす」ことができます。利益が増えれば,会社で働いている私たちだけではなくて,私たちの家族に使えるお金も増えていく,娯楽に使えるお金も増えていくという形で,好循環をつくっていくことができます。

 そのため、年休を多く取得させている会社など、そういった魅力ある職場づくりに勤めている会社は、今後私たちが長く勤めていくうえで重要な要素の一つになるということです。

 「魅力ある職場づくり」をしている会社は、長く続けている割合が高いというのは実はデータでも証明されています。

 これからお話していく、「有給休暇の取得促進」ですとか、「労働時間の短縮や働き方の柔軟化」などが、自分たちが働きやすいなと思ったり、会社を辞める人が減ったり、新入社員が同じ会社で働く割合が上がっていくということがわかっています。

 具体的に「魅力ある職場づくり」のために、日本は働き方改革でどういった政策をつくったのかについては、以下のとおりです。

 

 これらが働き方改革の全体像、概要になります。

 その中でも主要な改革の一つとして、次は時間外労働の上限規制についてお話していきます。

 

 

02 時間外労働の上限規制

 「残業や休日残業をさせるにはどんな決まりがありますか?」ということです。

 【ポイント】は2つです。残業時間の上限が罰則付きでできたこと。2023年4月1日から、中小企業にも割増賃金率の引き上げがされるということです。

 この残業をするということについて、前任の安倍総理は2016年9月に、「『モーレツ社員』の考え方が否定される日本にしていきたい」と述べました。その時の映像がこちらです。

www.youtube.com

 今の時代は、限られた時間の中でどこまでやれるのかといいう「生産性の高さ」が求められています。

 ただ今でも、どれだけ時間をかけてモーレツに働いたのかというのかを重要視する人は多い傾向にあります。

   

 以前、長時間労働で、某広告代理店の過労自殺事件がおこったときに、某大学教授が「月の残業時間が100時間を超えたくらいで過労死するのは情けない」とツイッターに投稿したことがありました。

 そのツイッターに対して「俺なんか若いときは残業150時間越えはざらだった」とか、大学教授の意見に賛同するようなコメントも寄せられていました。

 ただ、そういったツイッターの投稿について世間からは「時代遅れだ」ということで大きな批判を浴びました。

 長時間労働削減のためには、法律だけではなくて、これまでの企業の価値観も変えていくような「意識の改革」も必要となります。

  

 そもそもなぜ私たちは残業をするのかですけれども、労働経済の分析によるデータによると、企業が挙げる残業が発生する理由のトップ3のうちの1位が「業務の繁閑、突発的な業務」が67.5%、2位が「人手不足」の53%、3位が「仕事の性質、顧客の対応」が49%です。

 こういった理由が大半ですが、残業がどうしても必要な企業については、単に上限いっぱいに残業時間を設定するだけではなくて、ある程度工夫を重ねて、時間外労働の上限をどうするのかを考えていくことが大切です。

 そもそも法律で定められた労働時間には、限度というのがあります。

 1日だと8時間まで、1週間だと40時間までです。

 どうしても法律で定められた1日8時間を超えるとか、週に40時間を超えて残業しそうな場合は、 36協定を締結して、これを管轄の監督署へ届出ることが必要です。

 近年では、これまで青天井で働かせることができた時間外労働に、法律で罰則付きの上限ができました。

 その時間外労働の上限についてですが,もともとは大臣の告示によって,月45時間,年360時間までと決まっていました。でもこれはあくまで行政指導であって,実際には上限がないというのが実態でした。

 つまり,青天井で働かせることができるということになりますので,長時間労働の温床になる,これは過労死に繋がる,命にかかわるものであるとして非常に問題視されていました。

 これが近年になって,法律によって,ようやく月45時間,年間360時間までという上限ができました。どうしてもこの時間を超えてしまう場合であっても,年間720時間まで,月100時間未満まで,あと2か月から6か月の間のどの月の平均をとっても,80時間を超えていけないいということなど,細かな規定ができました。

 つまり,重要な点としては,これまで青天井で働かせることができた時間外労働に,法律で罰則付きの上限ができたということです。

 ちなみになぜ月45時間までが上限なのかというと,これは睡眠時間の関係から数字が出ています。

 例えば1日8時間の労働時間で,残業を2時間しました。そしたら1日10時間の労働時間になります。それ以外に,ご飯を食べたり,お手洗いに行ったりとか,お風呂に入ったりとか,そういった生理的に必要な時間が4時間かかるとされています。これで14時間です。

 あとは本を読んだりだとか,テレビを見たりだとか,友達と話したりとか,そういった余暇の時間が2時間とされています。いま合計16時間です。すると残りの8時間が睡眠時間となります。

 つまり残業が2時間なら8時間眠れるということです。週に2日の休みであれば,月の働く日数は22から23日になりますので,1日2時間残業したとすると残業時間は月45時間くらいになります。

 でも月45時間を超えると,8時間確保されていた睡眠時間を削らないといけなくなります。こういった睡眠不足というのは、命にかかわる問題ということもあって,基本的に,月45時間までと設定されています。

 ちなみにこちらが条文です。興味がある方はあとで読んでみてみてください。

 あと作成した資料には、周知の義務があります。

 大事なのは見やすい場所で周知をするということです。なので机の引き出しの中はNGです。

 

 次に中小企業に対する割増賃金率が、来年の4月1日から引き上げになります。

 もうあと1年切っていますけれど、中小事業主に対しても、大企業と同じように月60時間を超える時間外労働をさせる場合は、割増賃金率が50%以上となりました。

 理由は長時間労働を削減して、働いている人の健康を確保するためです。

 東大の医学部のある准教授のデータによれば、人間の脳が集中力を発揮できるのは朝目覚めてから13時間以内だそうです。それを超えると集中力がどんどん下がっていくそうです。

 集中力が下がっている労働者に対して50%も割増賃金を払うということになりますので、2重の意味で生産性を下げることになります。

 長時間労働はコストに合わないということを踏まえて、特に事業主の方は、労働時間管理というのを、考えていく必要があります

 残りのスライドの部分は、補足のお話になるので、あとで読んでいただければと思います。

 次は、年5日の年休の取得ついてお話していきます。

 

 

03   年5日の年次有給休暇取得

  

 年休の付与日数はどのように決まりますかということです。

 【ポイント】は2つです。パートやアルバイトも条件を満たせば与えられるということ、年休の付与日や取得状況を確認して、残り日数を管理するしくみが必要だということです。それらを中心にくわしくお話します。

 年休の発生要件や日数についてこちらにまとめましたので、確認していただければと思います。

 注意してもらいたいのは、パートやアルバイトの人なども、要件を満たせば年5日の付与義務の対象者になるということです。

 ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、年5日の付与義務というのは、年休を10日以上付与された労働者に対して、付与された日から1年間の間に最低でも5日以上は年休を消化させるというものです。

 2019年4月からこの法律が適用になりました。なので、例えば週4日で3年6か月勤務したパートさんは、10日以上付与されるので、この方にも年5日は最低でも与える必要があります

 これは2019年の新聞記事からとってきたものです。取得率が5割になっていることとか、日本人はみんなに気を使ってなかなか年休を取得しないとか書かれています。

 年休いっぱい余ってるから少しくらい使いたいけどでも使っちゃったら周りに迷惑かけちゃうし…、日本人は「みんなに迷惑がかかる」と感じてしまう人が多いので、取得率が世界的に低いんですよね。ということです。

 これは日本人特有の感覚です。私たち日本人は年休を取得することよりも、年休を取得したことでまわりからどう思われるかを気にしてしまいます。データでは10人いたら7人以上がそう感じています。だから年休が取得しにくい状況です。

 欧州では、実は年休の取得率という概念がないんですよ。「年休の取得率って何?」って感じで。

 なぜなのかというと、もっている年休は全て使い切るのが当たり前でしょという考え方だからです。

 だから世界から見て日本は大きな差がでています。

 そこで日本の場合は、みんなが年休を取得すればいいでしょということで、「他の人が年休を取得しているから、それなら、私も取得します。なら、自分も」という流れをつくるために、強制的に年休を与える法律がでてきました。

 ちなみに厚生労働省「令和3年度就労条件総合調査」によると、令和2年度の年休取得率は56.6%です。電気・ガス業は73.3と高いのですが、宿泊業・飲食サービス業は45%と最も低い傾向にあります。それぞれの業種ごとに取得の割合が違います。

 あと年休の取得促進について、これまでは、年休を使いたいなぁって思ってても、「私から年休を請求するのは、ちょっと…」ということで、なかなか年休を取得しますといえなかった。

 でも近年できたこの法律では、会社の方から、「いついつ休んでください」という形で、積極的に働きかけていきます。

 もし確実に年5日取得させたい場合は、年5日の時季指定を行うための計画届という書面をつかって取得させているところもあります。

 ちなみに年5日の年休っていつ与えるの?って話について説明します。

 たとえばAさんが2022年4月1日に入社しましたとします。出席率が8割以上で、6ヶ月間継続して勤務した場合、2022年の10月1日に10日付与されます。

 この2022年の10月1日から来年の2023年9月30日までの間、この1年間の間に5日以上年休を取得させる必要があるということです。

 ちなみに、既に5日以上の年休を請求・取得している労働者に対しては、使用者は時季指定をする義務はありません。

 労働者が年休を取得したら、管理簿に取得した分の記録をします。保存義務は3年間です。

 書き方についてですが、時間単位で3時間年休を取得したのであれば、1日8時間の人であれば残り5時間というふうに書いておくということなります。

 次に年休の与え方について。これは大きく分けると4つあります。

 一つが計画年休です。労使協定を締結すれば、計画的に取得日を定めて年休を与えることが可能です。ただ、労働者が自ら請求・取得できる年休を最低5日残す必要があります。

 あとは半日年休。1日の半分を年休で与えるというものです。

 次は時間単位の年休。どうしてもAさんは朝ドラをみてから仕事に行きたいと思ってる。でもそのためには、1時間遅れて会社に行かないといけない。だから、1時間年休を取る。

 こういったことも、労使協定を結んで労働者が時間単位で取得を請求した場合には、時間単位で与えることが可能です。

 あとは特別休暇です。例をあげると、それぞれの誕生日の日は休暇にしますといったバースデー休暇とか。

 あとある会社では、特別休暇として失恋休暇制度を設けているところもありました。失恋して心が痛いと。心の痛みの度合いによって失恋休暇の日数が決まっていく。こういった感じで会社独自の特別な休暇制度を任意で設けることも可能です。

 注意してほしいのは、年5日の付与義務の対象となるのは、1日単位か半日単位の年休の2つだけということです。失恋休暇を5日与えたからといって、年5日とったことにはなりません。理由は、有休というのは、そもそもまとまった休息をとることを趣旨としているからです。

 あと計画年休の例をまとめましたので、こちらも合わせて読んでいただければと思います。

 とどのつまりは、こういった方法を私たちで考えることというのは、働いている人たちが「私がいる会社って、魅力ある職場だな」と思える環境づくりにつながっていくということになるということです。

 ちなみにあるアメリカの研究では、年間17日有休を取ると、平均で年間50万円分の幸福が得られることがわかっています。有休とったほうがモチベーションは上がります。 

 もっというと、ボーナスを上げるよりも社員旅行とかするよりも自分たちのモチベーションが上がることがわかっています。なので、ぜひ休めるときは積極的にとるといいかなと思います。

 ここまでが年5日の付与義務についてでした。

 最後は副業兼業の促進についてです。

 

 

04   副業兼業の促進

 「どうしていま副業・兼業の促進が求められているのですか?」ということです。【ポイント】は2つです。

 副業・兼業は、第2の人生の準備として有効であること、過重労働防止のための健康確保措置に努めるということです。

 これから人生100年時代がやってきます。

 男女に差がありまして、男性の約4割は90歳まで、女性の約2割は100歳まで生きるとされています。

 調べてみると、どうやら若い人ほど長く生きる可能性が高いそうです。

 具体的には1957年生まれの約50%が89歳から94歳、67年生まれは92歳から96歳、77年生まれは95歳から98歳、87年生まれは98歳から100歳、97年生まれは100歳から102歳、2007年生まれの人は104歳まで生きるそうです。

 そういった人生100年時代を迎えていく私たちは、人生の早い段階から、自らの希望する働き方を選べる環境を作っていくことが必要になりました。なので現代では、副業・兼業といった多様な働き方への期待が高まっています。

 副業・兼業は、第2の人生の準備として有効とされています。

 一方で、長時間労働になる可能性があるので、過重労働防止や健康確保を図ることが重要です。

 副業・兼業は認めないといけないのかということですけれども、結論から言うと原則認めたほうがいいです。裁判になったときに、「基本的には働き方は労働者の自由だ」ということで、会社が敗訴になるケースが多いからです。

 同業他社に勤務するのは制限は出来るとは思うんですけど、基本的には副業兼業は認めていくいく方向性で考えていくことが大事です。

 というのも、副業兼業というのは、実はけっこうメリットが多いです。

 例えば労働者の社内では得られない知識・スキル獲得ですとか、それによる事業拡大ですね。

 そうすれば競争力も上げていくことも可能になります。

 じゃあ副業兼業を進めるためにはどうすればいいのか、ということですけれども、大きく流れが3つあります。まずは環境の整備。次に副業先の労働条件の確認、最後に過重労働になっていないか、それに対して健康確保措置を講じるという流れです。

 順に説明していきます。まずは環境の整備について。

 最初は就業規則を見直します。それに基づいて、労働者が副業しているのかどうか、副業しているのだとしたらどのような労働条件なのかということを、書面で手続きをしていきます。

 就業規則の書き方については、おおよそこんな感じになります。

 あと副業先について、どのようなことを確認すればいいのかについてもこちらにまとめましたので、こちらもあとでぜひ参考にしてください。

 

 どのように労働者に対して、副業先の労働時間を出してもらうのかについても、こちらに例を載せています。こういった労働時間の記録が必要なのは、労働時間を通算するためです。

  

 先ほど説明しましたように、1日8時間を超えて勤務すると割増賃金の支払いが必要になります。

 ここで私たちが一番注意したいのは、時間外労働は、後から労働契約を締結した企業が、割増賃金の支払い義務が生じるということです。

 たとえば企業Aで、もともと14時~19時までの1日5時間働いている人がいたとします。

 そのあとに、企業Bで、つまり副業先で8時~12時までの1日4時間働くことになったとします。

 すると1日の労働時間が合計9時間になります。

 1日の流れでいうと、企業Aが1時間の割増賃金を払うことになりそうなんですけど、実は1時間の時間外労働が発生するのは、企業Bです。理由は後に労働契約を締結したところだからです。

 具体的には、この例で言えば、11時から12時までが時間外労働になります。

 なので、割増賃金は、先に労働契約を締結した企業Aではなく、後に労働契約を契約した企業Bが支払うことになります。もしみなさんが企業Aであれば割増賃金は払う必要はありません。この点がややこしいので注意していただければと思います。

 こういったケースが出てくるので、お互いの会社で情報共有することが大事になります。

 最後、過重労働対策のための健康確保措置については、こちらの方にまとめましたので、あとで読んでいただければと思います。

 1点だけ説明しますと、時間外労働や休日労働が月80時間を超えた場合は、その人に対してその情報を通知をすることが義務になっています。あと労働者から産業医による面接指導の申し出があれば、実施させる義務があります。

 ここまでが副業・兼業の促進についてでした。

 

 まとめ

 今回のまとめはこちらにのせています。

 今回の説明会で参考にした資料はこちらの通りです。全部ネットで無料で見ることができます。

 今回お話した内容をもっと掘り下げて調べてみたい場合に、ぜひ参考にしていただければと思います。

 これで働き方改革の解説は以上です。ありがとうございました。

 

 質疑応答

Q 長時間労働がよろしくないということで働き方改革によって、時間外労働の規制が強化された。

 私も限られた時間でどれくらい成果を残すかを重視する立場ですが、会社によっては、人手不足で仕事量が多いところが多いと思います。

 そういうところは、法律上労働時間の上限を守ることが厳しくなる。仕事量は変わらないので。それについてはどう考えていますか。

A 人手不足だから「人手を増やす」のではなく、「無駄な業務を減らす」という考え方に変えることが必要だと思います。

 日本人って足し算的な考え方ばかりで、引き算をしないという特徴があります。

 「業務量が増えた」「だから残業して終わらせよう」と足し算で考えてしまう。

 そうではなく、「業務が増えた」「だからどう短縮化しよう」「どうしたら同じ成果を出せるか」「そもそもこの業務って必要なのか」と考える。必要がないなら思い切ってなくす。

 でもまだまだ日本では、デジタルでシェアできるのにわざわざ人が集まって長時間会議するとか、行政手続はもう電子で届け出できるのにわざわざ車で移動して届け出るとか、テレワークで書類作成できるのに、わざわざ片道1時間かけて会社に行って書類作成するとか、無駄なことばかりしています。

 人手不足の対応については、まずはそういった「無駄をどうやって減らしていくか」を考えることを優先した方がいいと私は考えています。

 

Q 個人の意見としては、60時間を超えている人は。経営者は嫌がると思っています。これはサービス残業を絶対に禁止することが前提ですが。

A 残業が月60時間超えたときの割増賃金率が50%に上がることですね。

 たしかに割増賃金ができたのは、会社に対する罰金的な考え方から生まれたものです。なので、サービス残業がないということを前提にしたら、経営者は嫌がるでしょうね。

 ただでさえ、たくさん残業して業務のパフォーマンスが落ちている人に対して、1.5倍のコストを払うからです。

 なので近年では、少しずつ労働時間ではなく成果に対して評価をするという人事評価制度をとりいれているところも増えています。

A 結局、部長レベルとか管理職の人に無駄なものを削っていくと期待している。すると自己責任になる。そういう人って考えてなくて、今まで同じ時間、割増賃金を増やして経営者が嫌がることをするほうが僕はいいと思います。

 

Q 業務のことなんですけど、どこも時間を短くしようとしている。でも業務は減らない。

 そこでうちでやっているのは、ひとつシステムを入れる。今までうちの会社って、グループ会社って月にかかっているネットワーク代金をグループ会社でしているものを、通信事業者にうちの会社から払うみたいなグループ外車外のひととかかわっている。

 インターネットのサーバーだとか勤怠管理のサービスだとかの立場で仕事をしているんですけど、一つの会社に対するインターネット代金。サーバーの使用量、とかひとつひとつ料金を支払ったりするのが半端なかった。なので一本化しようということで、グループ会社ドコモつかっているのをパッケージ化して、一律この値段ですよということで契約する。一本化するということをしている。支払いは今まで通り行える。でも請求の書類の数がぐっと減った。そこらへんを全部まとめてシステム化するということをすると意外とやりやすくなったりとかあるのかなと。

 あと自動化ですね。最初にコストをかけて、システムを使って効率化させる。その場合だと会社全体がよくなる方向に向かっていきますね。人件費ではなく設備にお金をかける。

A 前半で話していたのは、いろんな業務を一つに一本化するということ、後半で話していたのは、自動化による業務効率化についてですね。

 業務の効率化については、行政では電子申請を積極的に周知しています。

shinsei.e-gov.go.jp

 わざわざ会社から役所まで長時間移動しなくていい。会社にいながらできる。会社も楽。行政職員にとっても、そのほうが楽。

A 人口どんどん減っていくので、これまで人がしていたことを機械化することは大事だと思います。

A そういえば以前ガストで友達と食事したときに、猫型ロボットが食事を運んだり、食器を片付けにいったりしているのをみて、とっても驚いたんですよね笑

 今後はそういったことも当たり前にくる時代がくるんだろうなと思います。

A 労働問題は、自分の業務ど真ん中なので参考になりました。
 副業先で選ばれることも多いのですが、後からの会社の責務について知らなかったです。

ihay.hatenablog.com